先日、友人(建築関係者ではない)との会話の中で建築家のプランの考え方の話をしたんですが、
その時に僕が話した内容が、一般の方に知られていないと感じて今回のブログの内容に取り上げたいと思います。
という事で今回は平屋住宅を例として、僕の場合のプランの組み立て方みたいなものを書いてみます。
昨今、平屋を希望するクライアントが増えています。
これが一過性のブーム的なものなのか、はたまたかつての日本家屋的住み方が再認識されてきたのか、
(これは僕なりの解釈があるのですが、若干アカデミックな内容で長くなるので今回は割愛させていただきます・笑)
「平屋に住みたい」というクライアントの話を注意深く聞いていくと、様々な心理が見えてきいます。
そういった事って実はクライアント自身も気付いていない”深層心理”的な事であったりして、
僕ら建築家はその”深層心理”を顕在化させていき、それをクライアントに対して建築という具体的な空間として提案していきます。
例えば「平屋=老後を考えて完全バリアフリーとしたい」という場合
これは明確な将来ビジョンのパターンです。
この希望を叶える為には、もちろん完全平屋化が必要ですね。
ただ、平屋というのは建築費用が高くなりがちです。
それと、このパターンは便利さだけに目が行きがちで、意外と建てた後に情緒的な豊かさとは程遠い寂しい暮らしに陥ってしまうパターンがあります。
例として、簡単なCGを作成してみました。
サッシを境に内部と外部が”明確に”分断している感じで寂しく感じます。
ただ”見えてるだけの景色”といった感じでしょうか。
これに少し手を加えてみましょう↓
外部に木製バルコニーを追加してみました。
これだけでも内部と外部に関係性が生まれます。
こんな感じで、少しの設計者の操作で感じ方が変わっていきます。
平屋の場合は、特にサッシの配置計画もシビアに考える必要があって、外部と内部の関係性を重視してプランニングしてやらないと単調でつまら無い生活になってしまします。
これが老後の為というならなおさらで、プランニングを間違えた結果、老後は病室のような自宅で過ごすとなってしまう可能性もあります。
平屋希望の違うパターンとして「平屋=地面に近い生活(自然を感じる)がしたい」という場合もあります。
最近の平屋希望が増加している理由は、このパターンが増えているからだと感じています。
そういう場合は、同じ平屋でもこういうプランもあり得るかもしれません↓
意図的に一部を下げる(地面に近づける)事によって内外の繋がりがダイナミックになります。
とはいえ、やはり平屋はコストが高くなる・・・
その場合、平屋にこだわらなくても、こういうプランでの解き方もありえます↓
2階建でコストを抑えながら、平屋より地面を感じる魅力的な生活空間になります。
これらのプランCGはあくまで即席で考えた雑なものですが・・・(笑)
平屋の心理1つとっても”なぜ平屋なのか?”を紐解いていくと様々な解き方があり、それをクライアントとの対話によって具体化していきます。
一例にすぎないですが、こういった事をいくつも重ねて検討していってプランを形成していきます。
あくまで僕の場合の考え方ですが、こういった空間の枠組みを考えてから仕上げ材を考える事が多いです。
なので「仕上げ材はどうとでもなる」というと言い方が悪いかもしれませんが
「仕上げ材はゴールに向かう途中の通過点」みたいな感覚で設計している事が多いです。
(とはいえ、コストダウンを迫られない限りはクロス材は使わないようにとは考えています)
そういう事がハウスメーカーや工務店との違いであり、アイディンティティと言えます。
機会があれば、平屋以外でも色んな”解き方”を描いてみたいと思います。