キッチン廻りの設計思考

明けましておめでとうございます。

新年1回目は、住宅の場合のキッチンおよびその周辺の設計について書いていきます。

 

住宅設計の場合だと、ネットの普及やメーカーショールームの入り易さ

はたまた昨今では家電量販店などでもキッチン展示を行っているみたいで

”キッチン=システムキッチン”とイメージしているクライアントが圧倒的です

それに展示品があるという事は現物を見て、自分が使うイメージもしやすいですからね

 

ただ、僕の設計の場合はクライアントから「〇〇社の〇〇っていうキッチンが使いたい」という要望がない限り

システムキッチンは選ばず、設計して造作家具屋さんに作成してもらっています。

理由は明確に3つあって

1・・・毎日使う場所なので”手仕事”の温もりを感じれる場所にしたい

2・・・アフターケアや数年後のメンテナンスを考えると信頼できる職人(造作家具屋)に作ってもらいたい

3・・・既製品キッチンは高い(笑)

 

まず1ですが、キッチンって生活していく上で絶対に必要な場所です。

温かみの感じる設計や無機質なイメージの設計の場合、様々な意匠パターンはありますが、設計する際は職人の手仕事の熱量を感じられる場所にしたいと考えて設計しています。

 

その2ですが、既製品ってメーカーは必ず「アフターケアーも万全」と言っていますが、例えば10年もしたらほぼ間違いなく既製品の部品は生産終了しています。

つまり修理はほとんどのものが不可=買い直し(リノベ)となります。

その点、造作の場合だと職人と相談して何かしらの対応が可能です。

 

最後の3ですが、これはそのままの意味です(笑)

「造作だと高いんでしょ?」とよく言われますが、僕の感覚と経験だとどこのメーカーのものもミドルクラス以上だと「なぜこんなに高い!?」って感じです。

造作だと決まった価格帯がないので、高くも安くも設計できてしまいます。

 

キッチンを設計する際は、家事動線とかを必ず考えて”クライアントに合わせた暮らし方”でプランニングしていきます。

とはいえ、9割9分のクライアントが「楽な家事動線にしたい」と要望されます(笑)

ここからは弊所で設計したプランを元に説明していきます。

 

 

画像は以前、弊所で設計したものです。

このプランは「家の中に街並みを生み出す」を軸に設計しています。

なのでキッチンとダイニングの間に大きな造作棚(グレー)と家形の開口を設けています。

この部分は”街並み”なので、クライアントの生活によって形成されたいわゆる見せる収納という考えです。

逆に食器などは街並みを形成するイメージとは切り離したので、キッチンバック収納は食器類が見えない設計にしました。

リビングダイニングからキッチンが家形の開口以外ほとんど見えないようにしてあるのも同様の理由です。

 

 

次はリノベーション物件です。

この物件はRC住宅で、主な躯体と北面の水回りは触らない、LDKと玄関廻りみののリノベーションでした。

既存プランと改修プランで大きく違うのはキッチンの配置です。

キッチンをLDK部の中心に持ってきたのですが、これは単に「アイランド型したい」という簡単な要望だけではない理由があります。

普段は子育てを終えた年配の夫婦と犬と猫の2人+2匹の生活です。

その為、みんながここで生活していく上で心地よい距離感を保つ為と歩くのにストレスを感じない導線を考えた結果、アイランド型がベストだと考えました。

 

 

リビングダイニング側から見たキッチン面の素材と、キッチン側に立った時に見える素材も意図的に変えてあります。

これはアクセントという意味ではなく、見える素材を変える事によって「仕切りなく繋がってるけど、感覚的には仕切られている」という効果を狙ったものです。

キッチンの引き出し、キッチンバック収納、POWDERへの扉すべてシナで統一しています。

これによって視覚的には繋がっているけど、キッチン側に立つとリビングダイニングとは適度に距離感を感じる落ち着ける空間を形成しています。

それと実はENTRANCEとLDKの間のパッチワークのような建具と、POWDERへの建具は違う業者にお願いしています。

というのもPOWDERの建具はキッチン、キッチンバック収納と等価の存在感にしたかったので、造作家具屋に制作してもらいました。

(ENTRANCEとLDKの間の建具は造作建具専門業者)

 

 

次に別の新築住宅のプランです。

 

これは風景を取り込んで暮らすという考えで設計したものです。

(1枚目と2枚目の木目の色が微妙に違うのは編集のせいなのでお許しください・笑)

家事動線をキッチンを中心としてL字に計画しています。

画像1枚目のカーテンはパントリーで、その中に洗濯機の場所もあります。

これは扉を作るよりカーテンの方が金額が抑えられそうというのと、パントリーが扉(面)で見えると重い印象になりそうだなとの考えによるものです。

(このプランは外部を取り込んでいくイメージなので、カーテンなどの柔らかい素材の方が相応しい)

真ん中の暗がりの先には脱衣室、バス、そして玄関へのアプローチとなっています。

画像2枚目のキッチン奥の梁下までの箱状の箇所が冷蔵庫、その先のサッシからバルコニーに出て洗濯物を干すという動線計画です。

このプランはリビングダイニングは大きな吹き抜けですが、キッチンや水回りは低めの天井としています。

リビングダイニング=外部を取り込んだ開放感

キッチンや水回り=生活していく為の落ち着ける空間

大きな1つの空間の中にありながら、感覚によって住み分けでくる場所を狙ったプランです。

 

こんな感じで、クライアントや土地の状況などによってキッチン周辺の設計は毎回必ず違ってきます。

人や場所が変わるとプランも変わる。

だれでも80%満足できるように作られた既製品キッチンで僕のクライアントに100%満足してもらえるのか?・・・という思いで設計しています。

キッチンは毎日使うし、設計する中で特にスケールの大な場所なので存在感が必ず出る場所です。

そういった理由で妥協の許されない場所です。

常にそんな事を考えながらプランニングと現場監理を行っています。

 

新年1回目でかなり長文となってしましました(笑)

また今年も、建築家としての考えや、現場の進行があれば進行状況など

僕なりの目線で書いていきたいと思います。

改めまして、本年もよろしくお願いいたします。