格子紡ぎの場所

Date:2020/11

Location:idea

Category:空間

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昨今、屋外でのイベントが盛んになってきている。
工業製品化の進んだ住宅や町並みの中で生活していると外部(自然)との関わりが制限され
かつて生活と外部との関わりを重要視してきたライフスタイルが根源にある日本人にとって
日々の暮らしに息苦しさに似た窮屈さを感じてきているからだろう。
キャンプブームなどもその延長ではないかと思われる。
この流れはコロナ禍の影響でさらに加速化していくだろう。
屋外イベントでの新たな可能性を模索すべき時期なのかもしれない。

 

そうなってくると、資本主義に任せた大手メーカーの本格参入というのも容易に想像できる。
しかし、このムーブメントの流れに工業製品的な要素が組み合わさっていくのは本末転倒であり
外で過ごす時間の健やかさとは逆行していくのではと懸念してしまう。

 

もっとミニマムなレベルで即物的な構成で、様々なシチュエーションに対応できる
かつ”拠り所の”のような大らかさと温もりを兼ね備えた空間はできないか
設計を生業とする者として何か提案できないか考えたのが今回のプランである。

 

例えば、既存の屋台の出店のシステムを改めて考えてみる。
骨組みがあり、そこに出店者が暖簾をかけるだけで簡易型店舗として成立している
シンプルでミニマムなシステムのみで構成されている。
そして1日限り、あるいわ数日限りで跡形もなくなくなってしまう、ある意味で刹那的で侘び寂びを感じる事のできる存在なのかもしれない。
この構成を思考の取り掛かりとし、時代にあった形へブラッシュアップできないかと考える。
その上で、外部との関わりを損なう事なく、反密閉型としても可変できたらさらに可能性も広がるのではと考えた。

 

システムは簡単で、剛性と視覚的感覚を考慮し、木製で70×18の材を使用
壁・天井それぞれを格子状になるように組み、それらを紡ぐ(くむぐ)ように重ねていく。
そして、紡いだ格子状のものを土台となるベース部へ差し込むだけのシンプルな構成にて空間を形成する。
組み合わせる格子の大きさをコントロールして、ファブリックや什器をプラスする事で、店舗になったり休憩スペースになったりする。
この格子で紡がれた内部に入ると、視線を適度に遮る半開放型空間にも感じられる。
この半開放型空間を、例えば茶室のように使い、アウトドア茶道体験なども出来るかもしれない。

 

それぞれが多様な形で紡がれたものがイベントスペースに並ぶと
互いに呼応するような関係性となり、小さな小さな町並みを形成するかのように感じられる。
格子を紡いでいくという簡単なシステムでも、使い手によって可能性が幾重にも広がると考えている。