Date:2021/9〜2022/4
Location:岐阜県中津川市
Category:住宅
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構造 / 木造2階建
敷地面積 / 256㎡
建築面積 / 1階 54.24㎡ 2階 40.16㎡
施工 / 株式会社 アイギハウジング 長谷川 康太 氏
造園 / 株式会社 庭の福茂 福田 拓平 氏
撮影 / Tololo studio 谷川 ヒロシ 氏
「デザインリテラシーと建売住宅」
岐阜県中津川市の穏やかな自然の中に計画地はある。
縁があり、岐阜県南東部の地域に根差した仕事をされている工務店と”創作の家”というプロジェクトを立ち上げる事となった。
その第一弾としての建売住宅である。
南に接道、その先には土手と恵那山を望み
北側には竹林と緩やかな川が流れる。
敷地の周辺だけ時間がゆっくりと流れている、そんな感覚を抱く土地。
建売住宅としてのマーケティングやコマーシャルについてリサーチすると
定型文のようにパターン化しており、ほとんどすべての内容が
「おしゃれな暮らし・明るい・心地よい・こだわり」 → 感覚系
「理想の間取り・家事導線・収納たくさん・開放的なプラン」 → 平面プラン系
「シンプル・モダン・デザイン住宅・自然素材・ナチュラルテイスト」 → 素材・デザイン系
「高気密高断熱・最新設備・機能性・手入れ楽・快適な暮らし」 → 性能系
これらのどの内容も共通して、誰も説明の出来ない・実態の分からないものばかりだった。
そこで、町裏の住居では
感覚系 → 陰影を生み出す
平面プラン系 → 外部環境との調和
素材・デザイン系 → 内外の素材の連続性と環境に呼応するラフさ
性能系 → 価格競争の連鎖を断ち切る為、あえて打ち出さない(現代住宅ではやって当たり前)
という逆説的に導き出したコンセプトを軸にする事を考えた。
建売としての差別化であり、住宅としての普遍的な心地よさの再提案である。
外壁は、緑と空の抜けのある土地に溶け込むように、反射率の高いガルバリウム艶ありシルバー小波板とした。
面として立ち上がることにより、光や周辺の色を取り込み、反射する。
周辺環境の要素としては「小川」「竹林」「土手」といった日本の原風景のような敷地であったので、
内部空間の構成としても日本建築らしい意匠を考えた。
真壁や畳室、敷居や鴨居といった古典要素で構成するという方法ではなく、
陰影を作り、水平垂直ラインを強調し、屋根を感じさせ、外部との関わり方を感じさせる日本的意匠である。
その為、開口部は意図的に絞り、内部仕上げもグレー色の漆喰とラワン仕上げで薄暗くした。
差し込む光が拠り所のようになり、開口部の風景が色鮮やかに強調される。
だが、3方向の開口部と高低差や奥行き設けた水回り部、恵那山を望む吹き抜けで、
むしろ内部には開放感を感じさせる。
そして、LDKを囲むように設けたコの字型のデッキが濡れ縁のような存在となり、
外部空間への積極的な関わりを作る。
内部のキッチン側板はコンクリートブロックで作り、コの字型のデッキ周辺にもコンクリートブロックの塀を設けた。
素材で連続性を生み出し、塀という行き止まりを作る事で具体性を持つレイヤーを獲得する。
デザインされた住宅が圧倒的に少ない地域という事で、多少チャレンジングな部分はあったが、
結果として、設計〜竣工までに建築家・施工社・関係業者に建売住宅としては考えられないほど多くの熱量が注がれて竣工を迎えた。
建売住宅なので、どのような方が住まわれるかは想像するしかないのだが
まだ見ぬクライアントに、生涯愛される建築となる事を願っている。
※ご予約いただければ見学可能です。