この頃SNSばかり更新していてHPのブログの更新をしておりませんでしたが
ありがたい事にいくつか進行中のプロジェクトがあって慌ただしく過ごしております。
今回のブログは、最近思う事があって「これは文章化して伝えたい」との思いに駆られて書いております。
昨今度々見かけるHM(ハウスメーカー)や工務店での広告
"建築家と建てる家"
"機能×デザイン"
これに大いに疑問を感じているんです。
例えば”建築家と建てる家”っていうパターンですが、これは外注として建築家に平面プランと素材選びだけをさせているパターンがほとんど。
(中間業者としてクライアントへ建築家を紹介するというサービス業もありますが。それは除いて)
では、建築家は果たして平面パズルとアッセンブルな素材選びが上手な人が建築家なのかというと、いやそれは違うと....
(それは必要最低限でしかないスキル)
もう一つの”機能×デザイン”
これに関してはもっと思う事があって、そもそも機能とデザインは相反しているのが間違っていて
デザインを優先したら機能性がなくなった(不便になった)というのは、僕はデザインとして成立していないと考えているからです。
「じゃあデザインって何」というのが簡潔に伝えるのが難しいし、建築家によってデザインの定義は違う。
なので、今回は僕の場合のデザインを説明していきたいと思います。
分かりやすい例として、車で紐解いていきましょう。
僕の愛車はハイエースです。
なぜかというと、僕にとってハイエースは形そものもがコンセプチュアルだし、デザインとして秀逸だったからです。
例えば、僕は多趣味なタイプなので趣味道具も多く所有しています。
しかしこれを全て家に仕舞うと生活が圧迫されてしまう(笑)
だから僕には趣味の道具を仕舞っておける”おもちゃ箱”のような空間が必要だったんです。
こんなイメージですね
↓
じゃあこれをデザインの軸として、車としての機能をまとめていくと....
↓
まさにこの箱型がコンセプチュアルであるし、デザインとして秀逸と考えるわけです。
なので....
↓
これだと車という機能は問題なくても、この(機能も含めた)デザインでは違うんです。
こんな感じで、さらに次は住宅を設計する際の僕が答えとして出したデザインを具体例に説明してきます。
以前あったプロジェクトで、クライアントの要望で南北に細長い敷地の中での「とにかく明るいLDKにしたい」というのがありました。
細長い敷地だったので、南面からの採光を考えるとHMや工務店はだいたいこのようなデザインをすると思います。
↓
「南側に縦長的な吹き抜けを設ける」
だけど、デザインとは機能的にまとめて整える事という考えの僕の感覚だと、これはデザインとしては不足しているんです。
まず、この吹き抜けは採光を確保するためだけの”装置”でしかなく、しかもクライアントは「明るいLDK」を要望しているのにリビングしか明るくなってないんですから
なので、僕はこのようにデザインしました。
↓
吹き抜けをダイニング・キッチンの上部に設け、リビングの上をスタディコーナー等にするデザインです。
こうする事でLDK全てに光は送られ、かつスタディコーナーで勉強している子供の気配も感じられる。
さらに間口の狭い敷地でも、直接外部に面するよりも空間に奥行きが生まれる。
具体的にいうとこれです。
↓
この解きは”採光+家族の繋がり+奥行き”をまとめる機能の吹き抜けをデザインしました。
もう1つ別パターン
山間の敷地の計画で、特に南面からの山の風景が素晴らしい敷地でした。
この敷地でHMや工務店だとこのパターンが多いと思います。
↓
南の山に「開口部を大きく取ってウッドデッキを置きましょう」
しかし、これだと南の山は”見るだけの存在”なんです。
僕はデザインによって南の山を”感じる存在”にしたいと考えました。
そこでこのように解いていきました。
↓
南の山を感じれる存在にする為に、南の山の風景が生活を取り囲んでいる状態です。
その為に、具体的な使い方を想定しないスキマのような空間=BUFFER(室内だけど)で取り囲むプランです。
その考えを軸にして、BUFFERを可能な限り外部的に感じれるようにOUT SIDEとBUFFERは同じ床素材にする。
だけどウッドデッキだとログハウスっぽくなるだけなので、良い意味で荒々しい使い方が可能な土間コンで統一の方が良いと考えました。
さてここからが一番重要で、これをデザインとして成立させる方法を決定していく作業こそ僕の考えるデザインだし、建築家の職能です。
具体的にいうと、このデザインを考えた時にざっと考えただけでも、下記の問題や解き方、考え方が頭の中でめぐります。
↓
・土間コンだと必ずクラックが入る(だけど、内部だし床なので雨漏れリスクは心配ない)
・クラックが入っても、それを"味"だと考えれるかどうか
・もしくはクラック誘発目地を設けるか
・土間コンは特に冬場は冷えやすいから、断熱材を色々検討
・そもそも土間コンではなく、例えば"土間コンのように塗装した木材(床材)の方が良いのか
・だとすると既製品にはそんなものがないのでサンプルを作って検討
ざっとでもこんな感じの事が浮かんできます。
これらの問題を調べ上げて検討してクリアした結果、出来上がったものが僕にとっての”デザイン”という感じになります。
逆にいうと、問題をクリアせずに見た目だけ整えたものはデザインではないと考えています。
そして、それらをクリアしてデザインしたもの(CGですが)がこれになります。
↓
少し話は拡大しますが、例えば上記2例は構造的・知識的双方で様々なクリアすべき点が多いので経験値のないHMや工務店主導でこれを行うと間違いなく失敗するか、完成したものが思ってたものと違うとなるでしょう(笑)
これらのデザインを竣工まで導くのが建築家の真に必要な職能です。
そして、これらの知識や経験値に基づいて完成(竣工)までしっかり導く仕事に払っていただく対価が設計料となります。
別の視点で考えると、ただ単に”とにかく高気密高断熱”とか”とにかく収納たくさん”というだけの要望のクライアントには「そういうのが得意なHMか工務店があると思うのでそっちに行った方がいいですよ」って僕からオススメさせていただくようにしています(笑)
(幸いな事に今の所そういったクライアントには出会っていませんが)
また今回も長文になってしまいスミマセン(笑)
次回はもう少しライトな内容なものを書ければ良いな〜と思いますし、進行中のプロジェクトにも触れていければ良いな〜と考えています。